日本生気象学会雑誌
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原著
ラットにおけるノルエピネフリンおよびアセチルコリンによる肺血管反応に慢性低酸素曝露が与える影響
樫村 修生柏木 朋也酒井 秋男
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2007 年 44 巻 2 号 p. 43-50

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抄録

慢性低酸素曝露によって交感神経由来血管収縮物質である norepinephrine(NE)と血管弛緩物質である acetylcholine(ACh)による血管反応が変化するかどうか,肺血管に内皮細胞が存在する状態では明らかにされていない.本研究の目的は,3 週間の慢性常圧低酸素曝露(約15%O2),つまり慢性低酸素曝露終了直後,曝露終了 1 週間後および曝露終了 2 週間後では NE, phenylephrine(PE)による肺血管収縮および ACh による肺血管弛緩がラットの肺動脈において変化するかどうかを検討することである.NE および PE による肺血管収縮と ACh による肺血管弛緩は,in vitro の微小血管法により肺動脈で検討し,肺血管の張力は,フォーストランスデューサーで測定した.濃度依存性反応は,10−9 から 10−6 の NE,10−8 から 10−5 の PE,10−8 から 10−5 の ACh の蓄積添加によって求めた.EC50 で示される NE および PE による肺血管収縮の感受性は,両者とも慢性低酸素曝露終了直後および曝露終了 1 週間後で有意に増大した.慢性低酸素曝露終了直後から曝露終了 2 週間後の感受性は,control 群との間に差がみられなかった.IC50 で示される ACh による肺血管弛緩の感受性は,慢性低酸素曝露終了直後で有意に低下した.これらの結果から,慢性低酸素曝露により交感神経性肺血管収縮が亢進し,内皮細胞による肺血管弛緩が減弱することが示された.

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© 2007 日本生気象学会
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