日本生気象学会雑誌
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総説
気候と衣服
田村 照子
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2012 年 49 巻 2 号 p. 61-70

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抄録

衣服は持ち運び可能な微小環境である.本稿ではまず,衣服が人間の環境適応のためのいかに有効な装置であるかを概観した.空間的観点からは世界の気候と民族服の特徴の関係にそれを見ることができる.時間的視点からは,日本の気候変化に対する現代人の着衣量変化をカメラによる定点観測法を用いて研究した事例を紹介した.また,時代変化に伴う着衣量の変化については,その時代の住居構造,空調システム,さらに社会的な省エネルギーニーズなどが関係すると考えられた.一方,現代社会が求める,より気候に適した機能的で快適な衣服の開発に向けては,2 つの方向からのアプローチを紹介した.第 1 は衣服性能の物理的評価で,サーマルマネキンや発汗サーマルマネキンが有効な手法である.その開発から発展,現在の主要なタイプ,さらに衣服の熱・水分抵抗の要因についてまとめた.第 2 は生理学的評価で,人体の各種環境への生理・心理反応に基づく開発で,その研究方法並びに得られた成果を簡単に紹介した.

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© 2012 日本生気象学会
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