日本生気象学会雑誌
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炭酸ガス増加のアメリカの小麦, とうもろこし, 大豆の収量への影響と未来のエネルギーシステムとの関係
岡本 和人
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1985 年 22 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

大気中炭酸ガスの増加は, 農業に対し有益な効果 (光合成促進など) と有害な効果 (干ばつなど) の双方を持つ.アメリカの大豆, とうもろこし, および小麦の収量に対する炭酸ガス増加の影響を, 上記の有益および有害の効果双方を考慮に入れて計算した.
炭酸ガス増加は使用されるエネルギー源によるので, 計算は2つのエネルギーシナリオについて2050年まで行った.最初のシナリオは, 2050年まで化石燃料消費が続く場合であり, 2番目のシナリオは化石燃料消費が2000年から抑制され2050年にはほとんどゼロとなり, 来世紀のエネルギーは大部分が核エネルギーおよび太陽エネルギーによって供給される場合である.炭酸ガス放出量は2010年以降は第1の場合の方が第2の場合より多い.
結果は, とうもろこしと大豆では, 第1の場合の方が第2の場合より単位面積当りの収量が減少する.小麦では両者とも大体同じである.したがって, 炭酸ガス増加は農業に有益であるという意見は必ずしも正しくない.

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