日本生気象学会雑誌
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冷却・加温時の皮膚血流反応
上田 五雨竹岡 みち子
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1990 年 27 巻 2 号 p. 71-76

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抄録

家兎耳翼の先端約1/3を0℃または42℃の液に浸した際の, 組織血流の反応を, サーミスター (TH) 法及びLaser-Doppler (LD) 法で検討した.耳翼皮膚表面のTHのピックアップは水面上の中心動脈上に, またLD血流計の端子は大きい血管をさけて, 組織の毛細血管部上に張り付けた.0℃の浸水直後にTH法では必ず血管温度曲線が下降するが, LD法では血流曲線の上昇もあり, 不変もあり一定ではない.但し, 30分以上たつと低下を示す.約1時間の冷却の後, 体位を変えることなく, 42℃の温水を注入して経過を観察すると, 緩やかな血管拡張すなわち血流の増加があり, 引き続き発振的な動揺が現れる.この現象はきわめて規則的な波の出現のように見えるが, その振幅, 周期にもとつく変異係数 (CVA, CVT) を求め, 対照および冷却の最後の5分のCVと比較すると, 必ずしも42℃のCVの値は小さいとはいえない.但し, CVTはCVAよりは一般に小である.最も小であった42℃の例のCVTは, 7.9で, 対応するCVAは25.0であった.同一例の冷却時CVT, CVAはそれぞれ, 26.5, 66.3であり, 対照時のそれは, 17.7, 31.3であった.次に, 振幅/周期の比率すなわち尖り度を求めると, 42℃加温時の発振波の比率は極めて大であり, 対照と冷却時の比率とは, 有意の差がある.9例の冷却・加温時の対照, 冷却最後の5分, 及び加温発振時の波の周期の平均は54秒, 28秒, 16秒となる.しかし, 加温発振波は8~27秒位の範囲にわたる.この加温誘発振動現象は, 生体皮膚の防御反応であると見なされる.TH法では検出されないので, 血流性振動であると考えられる.この発振は冷却の前処置がなくても現れるが, その波形は不規則に見えて, 揃っていない.

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