日本生気象学会雑誌
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27 巻, 2 号
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  • 吉野 正敏
    1990 年 27 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 1990/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    都市気候や都市や集落の気候条件についての文献は紀元前にまでさかのぼる.その中でもマルクス・ヴィトルヴィウス (前75-26) の記述は詳細でかつ正しい.この論文はまず世界の都市気候学とそれが一部を構成している小気候学の発達史年表を編み, 2番目に日本のそれについて編んだ.そして3番目には時代ごとに変化の特徴をまとめた.その特徴は次のような項目にまとめられる. (i) 都市気候学の第1段階は永い先史時代の末, 19世紀になって始まった.これは, 19世紀がその黄金時代と言われる気候誌をより正確に記述するため, 観測所周辺の環境の影響を分析したところから始まったものである.都市温度 (今日の言葉ではヒートアイランド) は欧米の大都会においては19世紀末までに確認された. (ii) 第2段階は1927年に, ウィーンで都市内の気温分布を自動車を利用して詳しく測定するときから始まった.この時代の開始は日本ではわずか数年おくれただけである. (iii) 1950年代半ばに第3段階は始まったが, 以下のような特徴がある.a) 3次元構造の観測.b) リモートセンシングまたは航空写真の利用.c) 数値実験またはモデルによる計算.d) 大気汚染や小気候条件と関連をつけた分析や図化.e) 教科書・総合報告・文献目録などの刊行.f) 家屋密度, 粗度, 天空率, 人口などと関連した分析.g) エネルギー収支や水収支などの物理過程の研究.h) 発展途上国における都市気候研究.i) 再び深刻化した都市における環境問題の研究.
  • ―山梨県下の伝統的木造民家を対象として―
    宮野 則彦, 浅見 雅子, 宮野 秋彦
    1990 年 27 巻 2 号 p. 57-70
    発行日: 1990/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    この研究は, 気象条件の違いが住まい方にどのような影響を及ぼし, その結果, 住居の温熱環境がどのように変化するかを明らかにすることを目的としている.測定の対象としたのは, 気温及び風速の異なる山梨県下の四地域に建つ伝統的木造民家である.解析期間は1986年1月より1986年12月までの一年間である.解析の結果, 次の点が明らかとなった.1) 住まい方に及ぼす気象要素の影響の中では気温よりも風速の方が大きいと推定される.2) 特に, 冬季における住まい方においては, 断熱に対する配慮より, 気密に対する配慮の方が優先されていることからも, それが裏付けられる.3) その結果は, 寝室内気温の日平均値の上昇よりも, 日変動の抑制に大きな効果となって現われている.4) 寝室内気温の日変動が小さくなるため, 冬季の夜間における寝室と便所の気温差が拡大する結果となっている.
  • 上田 五雨, 竹岡 みち子
    1990 年 27 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 1990/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    家兎耳翼の先端約1/3を0℃または42℃の液に浸した際の, 組織血流の反応を, サーミスター (TH) 法及びLaser-Doppler (LD) 法で検討した.耳翼皮膚表面のTHのピックアップは水面上の中心動脈上に, またLD血流計の端子は大きい血管をさけて, 組織の毛細血管部上に張り付けた.0℃の浸水直後にTH法では必ず血管温度曲線が下降するが, LD法では血流曲線の上昇もあり, 不変もあり一定ではない.但し, 30分以上たつと低下を示す.約1時間の冷却の後, 体位を変えることなく, 42℃の温水を注入して経過を観察すると, 緩やかな血管拡張すなわち血流の増加があり, 引き続き発振的な動揺が現れる.この現象はきわめて規則的な波の出現のように見えるが, その振幅, 周期にもとつく変異係数 (CVA, CVT) を求め, 対照および冷却の最後の5分のCVと比較すると, 必ずしも42℃のCVの値は小さいとはいえない.但し, CVTはCVAよりは一般に小である.最も小であった42℃の例のCVTは, 7.9で, 対応するCVAは25.0であった.同一例の冷却時CVT, CVAはそれぞれ, 26.5, 66.3であり, 対照時のそれは, 17.7, 31.3であった.次に, 振幅/周期の比率すなわち尖り度を求めると, 42℃加温時の発振波の比率は極めて大であり, 対照と冷却時の比率とは, 有意の差がある.9例の冷却・加温時の対照, 冷却最後の5分, 及び加温発振時の波の周期の平均は54秒, 28秒, 16秒となる.しかし, 加温発振波は8~27秒位の範囲にわたる.この加温誘発振動現象は, 生体皮膚の防御反応であると見なされる.TH法では検出されないので, 血流性振動であると考えられる.この発振は冷却の前処置がなくても現れるが, その波形は不規則に見えて, 揃っていない.
  • 張 季平, 茅 志成
    1990 年 27 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 1990/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    1988年夏南京を襲った熱波に際し, およそ4500例の熱中症が発症し, 400名以上の重症患者が8箇所の病院に入院した.本稿では高齢者271例の重症熱中症の臨床と疫学について検討した.大部分の症例は気温が最も高い日に突然発症し, 症状としては皮膚温の上昇と皮膚の乾燥を呈した127例 (46.9%) , 体温が40℃以上のもの149例 (55.0%) せん妾や痙攣あるいは昏睡など中枢神経系の症状を呈した251例 (92.6%) であった.ほぼ半数の患者に白血球数の増加が認められたが, 血清のNa, K, Cl, Ca値は低下ないしはやや低下を示し, 2例に於いてのみ高カリウム血症を認めた.積極的な救急治療を行ったが, 死亡率は35.4%であった.
  • 菅屋 潤壹, 小川 徳雄, 大西 範和, 夏目 恵子, 落合 めぐみ, 今井 一乃, 山下 由果, 今村 律子
    1990 年 27 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 1990/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    6名の男子学生に, 室温31~34℃, 湿度40%の環境下で, ピーク波長1.3μmの近赤外, 3.5μmの中間赤外, 波長域3~25μmの遠赤外の, 3種のヒーターを用い, 有効放射温度9.0と12.5℃で, 躯幹部背面に赤外線を60分間連続に照射した.どの種類の赤外線でも, 深部温は照射開始後1分以内に上昇し始め, 照射中上昇し続けた.発汗量は照射部, 非照射部とも照射開始からほぼ3分間は急増し, 以後いったん横這いとなるかやや減少したのちゆっくり増加したが, 増加は40~50分で緩やかとなった.照射による深部温の上昇量, 発汗量の立上がり速度, 最大発汗量などに照射赤外線の種類による有意な差は認められなかった.したがって, 今回の照射条件では, 体温変化や発汗応答の波長による差はないと結論された.照射条件によっては, 赤外線は波長によらず, 照射開始直後から全身発汗を効率よく誘発する.
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