日本生気象学会雑誌
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運動トレーニング時と慢性寒冷暴露時の尿中カテコールアミン代謝産物の比較
樫村 修生柳平 坦徳酒井 秋男上田 五雨
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1991 年 28 巻 2 号 p. 85-93

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抄録

本研究は, 運動鍛錬ラットのランニング運動と寒冷馴化ラットの慢性寒冷暴露時に生じた交感神経活動, つまり尿中カテコールアミン代謝産物を検討した.ラットは無作為に温暖馴化群 (WA, n=20) , 寒冷馴化群 (CA, n=20) および運動鍛練群 (ET, n=20) に分けた.運動鍛練は, 1日1時間, 週6回8週間ほぼ35m/min走運動トレーニングをした.尿中カテコールアミン代謝産物であるVMAおよびHVAの分析は, HPLCで行った.ラットが5℃に1時間暴露されたとき, WA群の酸素摂取量はわずかに上昇したが, ETおよびCA群の酸素摂取量は, 顕著に増大した.ET群におけるトレッドミル運動によるVMAとHVAの増大は, CA群における寒冷暴露により得られた増大より有意に低かった.結腸温の上昇は, CA群における慢性寒冷暴露よりET群における1時間ランニング運動の方が高い.運動鍛練は, 褐色脂肪組織重量を抑制した.運動トレーニングにより生じる高体温とNE分泌は, 褐色脂肪組織での非ふるえ熱産生の相反する適応にあるだろう.結局, 本研究では, 運動トレーニングによる寒冷暴露時の熱産生の増大は, NEに対する非ふるえ熱産生反応の亢進に依存しないと思われる.

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