日本生気象学会雑誌
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運動時の発汗量の変化に対する中枢機構と末梢機構の関与
山崎 文夫近藤 徳彦池上 晴夫
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1991 年 28 巻 2 号 p. 95-106

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抄録

非定常状態における運動時の発汗量変化に対する中枢機構と末梢機構の関与について検討した.健康な男性6名に500, 700及び900kpm/minの3種類の自転車運動を, 環境温25℃ (相対湿度45%) の環境条件下で, 各40分間行わせ, 直腸温 (Tre) , 平均体温 (Tb) , 平均皮膚温, 局所発汗量, 汗の拍出頻度等を測定した.得られた結果は次の通りである.1) いずれの運動条件においても, 体温と発汗量の関係勾配はある特定の体温 (Treでは37.7℃前後, Tbでは36.8℃前後) を境に明らかに変化することが示された.2) 上記の境界点 (bcreaking point) において皮膚温の上昇率が最大になることが示された.3) 同一体温 (Tre, Tb) における発汗量は運動強度が強いほど多いことが示された.4) 発汗中枢及び汗腺の感受性は, 平均体温が約36.8℃以上になると低下すると判断された.5) 発汗中枢の活動性は運動強度が強いほど高いが, 汗腺の活動性は運動強度にはあまり影響されない.結論として, 運動開始後, 平均体温が約36.8℃に達する時点において, 発汗調節系の中枢及び末梢機構に何らかの変化が起こったことが考えられる.

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