日本生気象学会雑誌
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高地環境と生体
酒井 秋男
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1999 年 36 巻 2 号 p. 71-75

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抄録

高地環境が生体に与える主な外的要因は, 気圧の低下 (低酸素) と気温の低下である.生体はそのような環境圧に対して呼吸・循環器系を中心に適応現象がみられる.中でも, 右心室肥大や肺高血圧などの肺循環系を中心とした変化が顕著であるが, 完全高地適応動物とみられるナキウサギはそれらの反応が極めて小さいことが特徴である.エベレスト (8, 848m) の無酸素登頂は, 今までの生理学的常識から は不可能とされていた.その根拠は, エベレスト頂上のVO2maxは基礎代謝量に近似してしまうとするものであった.ところが, 1978年にMessncrとHabelcrによって無酸素登頂が成功した.これを機に, 1981年にはJ.westがAmcrican Mcdical Rcsearch Expedition to Everest (AMREE) を組織し, 全隊員医師によるエベレスト登頂を目指した.また, 1985年にはC.Houstonがエベレスト登頂を想定した, 低圧タンクによる大がかりなシミュレート実験 (Operation Everest II) が企画・実施された.

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