農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
Print ISSN : 1341-0156
ラオスの移住農村の生計:
セコン州の移住村を事例に
Inpong SILIPHOUTHONEKumi YASUNOBUHideo FURUTSUKA
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 23 巻 2 号 p. 31-40

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抄録

僻遠山間地域における貧困削減と焼畑農耕の安定化のため,ラオス政府は村民を低地へ移動させている.最初にこうして移住してきた人々は新しい環境に適応し,新たな収入源を見つけ,新しい農法を習得する必要がある.本研究ではどのように移住後の生計が変化するか調査し,世帯収入に影響を及ぼす因子を明らかにした.セコン州トオンケオ村から60 世帯を対象に2013,2014,2015 年に質問票を用いた調査を毎年実施した. その結果,農業活動は焼畑農耕から低地稲作へと変化し,世帯の平均収入は2012 年の650 ドルから2014 年の1,278 ドルまで増加したことが明らかになった. しかし,個々の事例では食用米の不足を経験した世帯も複数戸見られ,約31% の世帯が調査開始年と比較して緩やかな収入の減少を報告した.さらに,85% の世帯が調査期間中に慢性的な貧困状態にあることが確認された.世帯収入は成人労働者数,水田耕作面積,伐木労働の有無,家畜保有数と正の相関が見られた.その結果,米の収量増加や家畜の病気への処置方法について農業技術普及員による指導が必要であると考えられた.

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© 2016 農業生産技術管理学会
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