農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
Print ISSN : 1341-0156
23 巻, 2 号
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  • 第1 報 サトウキビ栽培に関する文献調査
    岡田 正三
    2016 年 23 巻 2 号 p. 1-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,各種の文献よりデータを収集して,これまで全容が把握されていなかった東三河地区のサトウキビ生産に関するオリジナルなデータベースを作成し,明治初期から昭和40 年(1965)までのその消長,栽培技術,生産性などを解明した.さらに,全国や愛知県各地との比較を通じて対象地域のサトウキビ栽培の特徴を明らかにした. (1)全国および愛知県の栽培 1) 愛知県の栽培は江戸時代の1744年頃に始まった. 2) 明治期の愛知県の収穫量は4,000 t 程度でほぼ安定しており,主に食用として利用されていた. 3) 第二次世界大戦までは全国の収穫量に2 年ほど遅れて追随する傾向が認められた. 4) 第一次世界大戦後および第二次世界大戦後にそれぞれ収穫量の顕著なピークが見られた. 5) 1951 年以降は急激に減少し,わが国の主要産地とは逆の傾向を示した. (2)東三河地区の栽培 1) 栽培は江戸時代末期より開始され,明治30 年(1997)頃から激減している.その後,昭和期になるとサトウキビ栽培が増加し,第二次世界大戦後は愛知県の主要産地として成長した. 2) 愛知県全体の収穫量とは異なり,顕著なピークは第二次世界大戦後の一回であった. 3) 単収は全国平均より低く,この地区におけるサトウキビの生産性は単収3 ~ 4 t/10 a であった. (3)栽培技術 1) 大蔵永常の『甘蔗大成』を基に栽培技術の考察を行った. 2) 単収は年度や地域間の変化が大きく,明瞭な傾向は見られなかった. 3) 東三河では,他の地域と異なる特別な栽培技術は認められなかった. 本報に引き続き,製糖に関する文献調査および現地聞き取り調査の結果を続報として述べたい.
  • Jia LIU, Yoh-ichi MATSUBARA
    2016 年 23 巻 2 号 p. 21-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル オープンアクセス
    アーバスキュラー菌根菌及び非病原性フザリウム菌(NPFO)によるアスパラガス立枯病に対する全身誘導抵抗性及び抗酸化機能変動をsplit root system 法により調査した.菌根菌及びNPFO の単独・複合接種区では地上部・地下部乾物重は対照区より増大し,植物体成長促進効果がみられた.立枯病菌(Fusarium oxysporum f. sp. asparagi)接種4 週間後,発病率・発病程度は菌根菌及びNPFO 処理区で対照区より軽減された.この場合,接種根及び非接種根の両方で耐病性がみられたことから誘導抵抗性が確認された.また,抗酸化機能(SOD 活性,DPPH ラジカル捕捉能,総ポリフェノール・アスコルビン酸含量)は,菌根菌及びNPFOの接種根及び非接種根で地上部・地下部とも対照区より立枯病菌接種前後で増大する場合が多かった.これらの結果から,アーバスキュラー菌根菌及び非病原性フザリウム菌によるアスパラガス立枯病の全身誘導抵抗性が確認され,生物的防除に利用できる可能性が示唆されるとともに,抗酸化機能が全身誘導抵抗性に関連することが示された.
  • セコン州の移住村を事例に
    Inpong SILIPHOUTHONE, Kumi YASUNOBU, Hideo FURUTSUKA
    2016 年 23 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル オープンアクセス
    僻遠山間地域における貧困削減と焼畑農耕の安定化のため,ラオス政府は村民を低地へ移動させている.最初にこうして移住してきた人々は新しい環境に適応し,新たな収入源を見つけ,新しい農法を習得する必要がある.本研究ではどのように移住後の生計が変化するか調査し,世帯収入に影響を及ぼす因子を明らかにした.セコン州トオンケオ村から60 世帯を対象に2013,2014,2015 年に質問票を用いた調査を毎年実施した. その結果,農業活動は焼畑農耕から低地稲作へと変化し,世帯の平均収入は2012 年の650 ドルから2014 年の1,278 ドルまで増加したことが明らかになった. しかし,個々の事例では食用米の不足を経験した世帯も複数戸見られ,約31% の世帯が調査開始年と比較して緩やかな収入の減少を報告した.さらに,85% の世帯が調査期間中に慢性的な貧困状態にあることが確認された.世帯収入は成人労働者数,水田耕作面積,伐木労働の有無,家畜保有数と正の相関が見られた.その結果,米の収量増加や家畜の病気への処置方法について農業技術普及員による指導が必要であると考えられた.
  • Mingfeng JIANG, Yoshihiro TAKEMURA, Katsuou KUROKI, Fumio TAMURA
    2016 年 23 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル オープンアクセス
    ニホンナシ果実の軟化と成熟過程における肉質の変化を引き起こす要因を解明するために,細胞壁成分が果実成熟に及ぼす影響を測定した.細胞壁の主要成分であるエタノール不溶性固定物は肉質の粗い品種の方が柔らかい品種より高く,5 月下旬と6 月上旬のエタノール不溶性固定物含量が成熟期の含量に及ぼす影響し,成熟期の硬度を決定する要因である.セルロース含量とリグニン含量はエタノール不溶性固定物含量に及ぼす影響し,特に5 月下旬と6 月上旬の間に顕著に見られた.幸水と長十郎の光合成産物の分配を調査したところ,5 月中旬に長十郎の方のエタノール不溶性固定物への分配が多かった.
  • Takashi FUDANO, Keiko KATAOKA, Rihito TAKISAWA, Fumio KISHIDA, Masatos ...
    2016 年 23 巻 2 号 p. 49-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国では放置竹林の拡大が重大な問題となっている.放置竹林をこれ以上増やさないためにも竹材の新たな消費方法が望まれている.そこで,竹材をパウダー化した竹粉が鉢栽培における代替培養土として利用できるか検討するために,配合土の種類と施肥量の組み合わせ処理がフレンチマリーゴールド,イチゴおよびトマトの成長に及ぼす影響を調査した.標準の施肥条件下では竹粉を配合した培養土で栽培したフレンチマリーゴールドの成長は慣行配合土に比べて劣ったが,標準の2 倍量の肥料を施与した条件下では慣行配合土と同程度の成長を示した.イチゴ果実の重さと糖度は配合土の種類の影響を受けなかった.トマト果実の品質は竹粉配合土に標準の2 倍量施与した処理区と慣行配合土に標準量施肥した処理区との間で有意な差異はみられなかった.これらの結果から,園芸生産における代替培養土として竹粉が利用できることが示された.
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