本研究では,各種の文献よりデータを収集して,これまで全容が把握されていなかった東三河地区のサトウキビ生産に関するオリジナルなデータベースを作成し,明治初期から昭和40 年(1965)までのその消長,栽培技術,生産性などを解明した.さらに,全国や愛知県各地との比較を通じて対象地域のサトウキビ栽培の特徴を明らかにした.
(1)全国および愛知県の栽培
1) 愛知県の栽培は江戸時代の1744年頃に始まった.
2) 明治期の愛知県の収穫量は4,000 t 程度でほぼ安定しており,主に食用として利用されていた.
3) 第二次世界大戦までは全国の収穫量に2 年ほど遅れて追随する傾向が認められた.
4) 第一次世界大戦後および第二次世界大戦後にそれぞれ収穫量の顕著なピークが見られた.
5) 1951 年以降は急激に減少し,わが国の主要産地とは逆の傾向を示した.
(2)東三河地区の栽培
1) 栽培は江戸時代末期より開始され,明治30 年(1997)頃から激減している.その後,昭和期になるとサトウキビ栽培が増加し,第二次世界大戦後は愛知県の主要産地として成長した.
2) 愛知県全体の収穫量とは異なり,顕著なピークは第二次世界大戦後の一回であった.
3) 単収は全国平均より低く,この地区におけるサトウキビの生産性は単収3 ~ 4 t/10 a であった.
(3)栽培技術
1) 大蔵永常の『甘蔗大成』を基に栽培技術の考察を行った.
2) 単収は年度や地域間の変化が大きく,明瞭な傾向は見られなかった.
3) 東三河では,他の地域と異なる特別な栽培技術は認められなかった.
本報に引き続き,製糖に関する文献調査および現地聞き取り調査の結果を続報として述べたい.
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