2018 年 25 巻 2 号 p. 35-41
初期時点での非対称的な川下企業を有する垂直的関連企業グループが複数存在するのであれば,効率的企業により割高な価格設定を行う伝統的な差別価格や単一価格だけでなく,効率的企業により割安な価格設定を行う非伝統的な差別価格も採用されることを,保苅(2018)は明らかにしている.本論文では,初期時点での非対称性の仮定なしでもR&Dにおけるスピルオーバー効果を仮定すれば,保苅(2018)と同様の結果が得られることを明らかにし,川上企業の最適戦略の結果として,「新新貿易理論」が強調する企業間の非対称性が拡大するケースがあると指摘した保苅(2018)の主張に,一定程度のロバスト性がある可能性を指摘する.他方,スピルオーバー効果により,その価格パターンが保苅(2018)とは異なることも示す.