生産管理
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研究論文
多品目多段工程動的ロットサイズスケジューリングモデルのOpenMPによる並列処理を用いた加速化
小林 稔
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2019 年 26 巻 1 号 p. 109-116

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抄録

本稿では多品目多段工程動的ロットサイズスケジューリングモデルにおける求解時の計算速度を加速するために,共有メモリ型のマルチコアCPUを用いた並列処理(スレッド並列)を取り扱う.このモデルはLagrange分解・調整法によって,原問題を品目別の子問題に分解して他と独立に動的計画法で解いて,子問題間に生じる制約違反を調整して実行可能解を導く方法である.仮に各品目の求解処理を異なるスレッドに割り当てられれば,処理の全体の高速化が期待できる.そこで本研究では,まず,メモリ使用量を抑える方針で作られた既存プログラムの構造を活かした並列処理プログラムを作成し,数値計算によって計算時間の検証を行った.その結果,実際には,配列を並列化する際にかかるオーバーヘッドが大きく,高速化の効果が得られるどころか,逐次処理に比べて計算が遅くなってしまうという知見が得られた.そこで,オーバーヘッドを小さくするためには主要な配列の共有化が有効であると考え,動的計画法で用いる関数方程式を保持するための配列と状態を保持するための配列など計3つの配列を共有化するようにプログラムを改良した.改良後のプログラムを用いた数値計算では,スレッド数を増やす度に計算時間が減少し,最大で3倍以上の加速化が達成できた.

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© 2019 一般社団法人日本生産管理学会
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