2019 年 26 巻 1 号 p. 117-122
2017年,2018年は,多くの面で,日本の旧来的なやり方,慣行の悪い面がクローズアップされた年であった.それは,日本企業にも当てはまり,それは,日産,マツダ,スズキなどの自動車製造業,三菱マテリアル,日立化成,神戸製鋼所,東レなどの素材・部品製造業を行う企業が行っていた品質検査データ不正,データ改竄のことをさす.これらの不祥事が発覚した際,日本企業の経営陣は,組織の関与を否定し,担当業務を担う現場の独断,あるいはそれが常態化し,経営陣には事後的にそれがしらされたと述べられることが多い.しかし,本当に現場の本社に情報を伝達しないモラル・ハザードがこの問題の要因であろうか,本稿では,モラル・ハザードやアドバース・セレクションといった品質不正問題を説明した現象を検討し,日本企業で発生した品質不正問題の責任の所在とその原因を明らかにする.