日本の食料産業は地域立脚型が多く地場産業として地域と深い関わりがあり,近年,新たな地場産業や観光資源,雇用の創出を目的として,農産物を活用した地域活性化の取り組みが活発である.日本国内におけるオリーブオイルの需要拡大に伴い,全国において新規参入の動きがありオリーブの生産量は増大している.本研究の目的は,近年発展過程にある国内のオリーブ産業について,香川県小豆島のオリーブ産業を事例に発展促進過程をフェーズごとに分類し,地域に依拠する小豆島のオリーブ産業クラスターの発展の要素を明らかにすることである.調査を行った結果,気候風土に適した素材特性があること,外部からの需要と基礎研究サポート,産業間での問題共有,他の産業や関連諸機関と地域の問題を共有する4つの要素が重要な役割を果たしていること,また「共存」をベースとした文化のもと,ゆるやかに柔軟性をもつ産業へと変化していることが明らかになった.醸成される共同体意識は,フェーズの変化とともに場と共有目的を拡張し,主体的な連携活動は有機的な交差へとつながっている.また既存の地場産業で培われた知識をもとに高度な専門性を追求するなどの価値連鎖が起き,産業の発展による地域の発展へとつながっている.