生産管理
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Print ISSN : 1341-528X
研究論文Ⓡ
福島原発事故による身体発育へのリスク分析
-肥痩度のトラッキング評価に基づく解析-
渡部 琢也藤井 勝紀田中 光
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2019 年 26 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

東日本大震災時の環境下における身体の発育評価については,震災時の前後におけるデータが取得できていないと解析が難しく,加えて仮にデータが存在しても,身体発育を縦断的に評価する方法論が現状においては確立できていないというのが実情である.そこで,先の研究[5]で震災後の身体発育評価を確立するために,学齢期の縦断的BMIの加齢データ基づいて,ウェーブレット補間モデルを適用してBMIの加齢評価システムチャートを構築した.本研究は,福島県における原発事故の制限区域にある学齢期の子どもたちの肥痩度のトラッキング状態を検証し,どの程度の者が変動し,逸脱するかを検証しようとした.その結果,通常のトラッキング状態から逸脱した者は35%,女子は31%であり,先の研究[5]では凡そ15%程度であることから考えれば,原発事故の影響を受けた地域では明らかに多いことが示された.原発事故により生活面や活動を制限されれば,体格,特に肥痩度に影響があると考えられる.したがって,震災による身体的発育発達への影響を検証する筋道ができたと考えられる.そして,福島原発事故の身体への影響が明らかになることによって,原発事故による災害の身体へのリスクが明確にされたと考えられる.

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© 2019 一般社団法人日本生産管理学会
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