2020 年 27 巻 1 号 p. 29-38
近年,会計基準を国際的に統一しようとする流れがあるのは周知のとおりであり,我が国でも国際財務報告基準(以下,IFRS)とのコンバージェンス(日本基準とIFRSの差異を無くす),ないしアドプション(IFRSを適用)が進められている.ここで,会計は認識,測定,記録,報告の一連のプロセスであるが,そのうちの一つである測定は重要な論点であり,特に金融商品においては全て公正価値で測定すべきか否か(全面公正価値測定か混合測定か)が長年議論されてきた.本稿では,約30年にわたる,金融商品の測定基礎に関するIFRS(案)およびこれを作成する国際会計基準審議会(以下,IASB)の姿勢の変遷を観察することで,先行研究では断片的にしか説明されていなかったIASBの公正価値測定への対応を明らかすることができた.また,公正価値測定についても,レベル2公正価値に関する懸念などの独自の見解に基づき,今後の会計基準の見直しにあたって検討すべき点を提示し,その解決策の一例を示している.