抄録
伝統的なEOQモデルは小売業者の資本が無制限で, 商品を受け取ると直ちに代金を支払う.しかし, 現実では供給業者は小売業者に対して, ある支払期間を提供する.我々はこの期間を企業間信用期間と呼ぶ.すなわち, 小売業者はその期間中に商品を販売し, 現金を回収し, その現金を有効利用 (例えば, 投資, 預金など) するのが一般的である.従来の企業間信用取引に関する最適化問題 [1-4] では, 供給業者と小売業者との間に企業間信用取引を与えていたが, 小売業者と顧客との間ではその取引は行われていない.本論文では, 小売業者と顧客に対する信用取引をも考慮し, そのときの小売業者の最適化問題を発展させることに目的をおいて定式化を行う.但し, 供給業者により提供される信用期間Mは, 小売業者により提供される顧客の信用期間Nよりも長いと仮定している (M≧N).ここでの問題は, 供給業者はn人の小売業者とパートナー関係になっており, 各小売業者に提供するサイクル時間の合計には制約があると仮定している (T0以下).つまり, 全ての小売業者にかかる総費用を最小に抑えるためには, 制約条件を考慮しながら各小売業者に対してどのようにサイクル時間を提供すればよいかという問題を考察している.さらに, ここでの問題を具体的に説明するために数値例を示す.