Engineering は,価値中立であるべき「自然科学の適用」と,価値観が反映する「有用性のある何かの創造」という異質な二つの行為から構成されると考えられる.現代文明は,拠って立つ規範も不明確で,その問題構造も不明確な問題(wicked/ill structured problem)に数多く直面している.この問題に適切に対処しないと,係争や不信感を生み,技術の発展や普及を制約してしまうおそれがある.本稿は,設計案の作成とその評価を繰り返して,暗黙の規範をあぶりだしつつ,当事者に受け入れられる設計解を探索していくデザイン思考がEngineering に定着していくよう,その学理の確立に努めるべき必要を説く.