2023 年 75 巻 3 号 p. 249-252
「文化」と「工学」,両者のつながりを再生するのはヴァーナキュラー(Vernacular)という概念であり,それを具体化するのは社会システム・デザインだと考えられる.本稿では現代の代表的な消費者商品である住宅と自動車を対象に検討する.ヴァーナキュラーの典型である住宅は世界共通の工学製品として見做された.しかし今日,住宅は土地固有の性格を反映した,ヴァーナキュラーな(土地に根差した)ものに帰っている.日常的に使われる住宅には気候風土とそれに由来する文化と人々の育んできた心情,美意識が反映される.一方の自動車も近現代の工業製品の典型だが,やがてヴァーナキュラーな製品として見做されるようになるだろう.ガソリン車からEV へという発想自体が時代遅れになり,EV だけでなく多様な駆動系とその他の操舵系,制御系との組み合わせも,People modal system の出現で地域の持つ風土,文化に沿った幅広い選択肢を選びながらデザインされるであろう.