日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
Print ISSN : 0021-5007
ISSN-L : 0021-5007
総説
植物を介した植食者間の間接効果の普遍的特徴 : メタ解析を用いた定量的レビュー
宮本 康
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 56 巻 2 号 p. 125-133

詳細
抄録

植物を介した植食者間の間接効果の普遍的特長を、3種系の相互作用を対象としてメタ解析を用いて検証した。室内実験・野外実験・野外調査により間接効果を植食者の密度変化として評価した44例を対象に(1)間接効果の符合と強度の特徴、(2)研究期間に応じた間接効果の強度の変化、(3)間接効果と直接効果の相対強度、の3点を検証した。解析の結果、(1)植物の変化を介した植食者間の間接効果は3つの植物の変化様式(量・質・すみかの変化)の間で強度に違いがない反面、符合(正・負)には違いがあることが明らかになった。植物の量の変化を介した間接効果はマイナスの効果に、植物上のすみかの変化を介した間接効果はプラスの効果に偏り、さらに、植物の質の変化を介した間接効果はプラスとマイナスの効果が均等に生じていた。また(2)事例数の多い「植物の質の変化を介した間接効果」に注目した場合、その強度は実験期間の長期化に応じて減衰しないことが示された。さらに、(3)植物の質の変化を介した間接効果では、その強度は直接効果に較べて大きいことが示唆された。特に(1)と(3)の特徴は栄養カスケードに代表される他の間接効果とは対照的なことから、植物を介した植食者間の間接効果のみの特徴である可能性が考えられる。

著者関連情報
© 2006 一般社団法人 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top