抄録
生態学と生理学の乖離は、それぞれの問題設定の違いから生じたのだとする見方もあるが、生態学と生理学の両方の手法を使って同じ問題にアプローチすることで、新しい展開が生まれる局面は多いと思われる。昆虫の生理学と生態学の境界に生じる課題には、栄養生理、呼吸(エネルギー収支)、水収支、体温調節、免疫、感覚など様々なものがあるが、ここではおもに体温調節についての話題を提供する。また、個体レベルの生理学とフィールド生態学の境界領域の開拓には、古いテーマに新しい手法を導入することが良策であることを述べる。