日本生態学会誌
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原著
砂礫地における堆積物の粒度組成が植生構造に及ぼす影響 : 高山風衝砂礫地・河床・海浜に共通する要因について
塩野 貴之持田 幸良
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2012 年 62 巻 1 号 p. 1-17

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抄録
砂礫地では、表層堆積物の粒度組成が植生の植被率や種組成を決定付けており、多くの立地において共通する要因があることを明らかにした。本研究では高山風衝砂礫地、河床、海浜を対象とした。各調査地において植被率、種組成、生活型と表層堆積物の粒度組成および細粒の充填粒子の粒度組成との関係を分析した。その結果、風衝砂礫地では表層礫の粒径が大きいほど植被率が増加した。海浜では、粒径が小さい立地と比して粒径が大きい立地において植被率が高い傾向があった。河床では、河道からの比高が高く乾燥した川原においては充填粒子の粒径が小さいほど草本植生の植被率が高く、比高が低い河道沿いでは植被率と粒度組成には相関が見出せなかった。以上より風衝砂礫地や海浜では表層堆積物の粒径が大きいほど堆積物の移動量が減少すること、すなわち攪乱強度が減少するため植被率が増加すると推察された。一方、川原では充填粒子の粒径が小さいほど適潤になるため、植被率が高まると考えられた。攪乱が卓越する風衝砂礫地、河道沿い、海浜の種組成は表層堆積物の粒径により明瞭に区分された。また粒径が大きい立地ほど休眠芽の位置が高い種が優占していた。地下器官型は粒径の小さい立地では地下茎を持つ種が優占するが、粒径が大きいと匍匐茎を持つ種が増加した。このことから各粒径に適応可能な植物の生活型が異なるため、粒径により種組成に相異が生じるものと考えられた。
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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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