維管束植物の師部は、光合成生産物を植物体の各部位に輸送する通路であるだけでなく、生態系の炭素循環において炭素が大気から土壌への炭素の移動する際の重要な経路となっている。この師部における師液流を数値化するために有効な方法のひとつとして、炭素安定同位体パルスラベリングがある。これは、主にガス態の13Cを標識物質として、光合成によって炭素を植物体へ取り込ませ、その後の移動過程を追跡する手法である。本稿では、森林を構成する高木を主な対象として、このパルスラベリングの原理を解説し、師液流を評価するための方法を紹介する。また、樹木体内の師部を介した生態系における炭素移動メカニズムに係わる研究動向を解説し、今後の課題を考察する。