2018 年 68 巻 3 号 p. 233-240
生態学コミュニティが置かれた外部環境が時代とともに変化した結果、関係を持たざるを得ない「他者」が出現し、コミュニケーションの問題が顕在化している。現段階で、生物多様性の保全のために社会変革を誘導するための経済システムや政治システムは確立されておらず、コミュニケーション行為を媒介として社会制度に働きかけていくしかないという現実がある。また、政策形成や実際の保全活動の実施など全ての局面において、他者の経験や価値観等の違いを前提としたコミュニケーションは基盤となりうる。そして、コミュニケーション能力は基礎的なもので十分であり、教育・訓練で身につくものである。そのような能力を持った実務家の育成が、生態学コミュニティに求められている。