抄録
これまで不明な点が多かった西日本のシカの食性の例として、四国剣山系三嶺のシカの食性を糞分析により解明した。標高1100 m台のさおりが原ではシカの採食により林床が貧弱になっており、シカの糞でも繊維と稈・鞘が多く、シカの食物状況は劣悪であった。標高1600 m台のカヤハゲでは2007年にシカの採食によりミヤマクマザサが消滅し、現在はススキ群落になっており、糞組成でもイネ科と稈・鞘が多かった。標高1700 m台の地蔵の頭では稜線にミヤマクマザサが密生しており、シカの糞もササが優占していた。山地帯では植生もシカの強い影響で壊滅状態であるが、シカ自身の食性も劣悪であった。高標高に生息するシカにとっては尾根のミヤマクマザサは特に冬の食物として重要であることがわかった。シカの置かれた状態を判断するのに食性解明は有力な情報をもたらすことを指摘した。