日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
Print ISSN : 0021-5007
ISSN-L : 0021-5007
特集2 動物行動学を物理の目で捉え直す:力と熱が形づくる動物の行動様式
生態学としてのバイオメカニクス
菊地 デイル万次郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 72 巻 1 号 p. 55-

詳細
抄録

バイオメカニクスは生物の形態や運動を力学的に分析する学問である。生物の行動は小さな動きの積み重ねであり、力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動はエネルギー収支を介して適応度にまで影響する。これまでバイオメカニクスは生物の機構を力学的に探求することで、生物の運動における普遍的な原理や機能の発見を遂げてきた。一方で、バイオメカニクスは境界領域であるためか、“孤立した学問”になりやすいことが指摘されている。このような状況を打破するには、生態学の研究テーマにも取り組むことで、より広範な問いに答えていくことが必要であろう。近年は、形態や運動の機能と制約のトレードオフ関係を分析することで、進化についても理解を深めようとするアプローチが提唱されている。こうした新しいアプローチに加え、隣接した分野の研究者とも連携していくことでバイオメカニクスは生態学の一分野として発展していくだろう。本論では代表的な研究を紹介しながら、バイオメカニクスが生態学分野にどのように貢献してきたのかを考察する。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top