日本生態学会誌
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人獣共通感染症リスクと侵略的外来種問題
亘 悠哉
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ジャーナル オープンアクセス HTML 早期公開

論文ID: 2207

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抄録

人獣共通感染症の発生は増加しており、公衆衛生や社会経済、生物多様性の重大なリスクとなっている。人獣共通感染症の発生を促進する主な要因のひとつが外来種の侵入である。そのプロセスはおもに2つあり、ひとつは外来種の侵入に伴う病原体や病原体媒介生物(ベクター)の随伴移入により、新たな感染症リスクが生じるプロセス、もうひとつはもともと地域に潜在する病原体やベクターを増加・拡散させるプロセスである。しかしながら、これまで人獣共通感染症に主に対応してきた動物衛生や公衆衛生の分野においては、必ずしも外来種問題の関心が高くはなく、人獣共通感染症対策において外来種対策や生態学的な概念が取り入れられることはほとんどなかった。こうした知識ギャップを埋めるため、本総説では、これまで散発的に報告されてきた人獣共通感染症と外来種をキーワードとする研究事例を整理し、以下の3つの事例について紹介し、それぞれ外来種が感染サイクルの中で果たす役割やとりうる対策の方向性に整理した。1)イエネコへの餌やりで深刻化するトキソプラズマ症リスク、2)自然環境と人間生活圏をまたいだ重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染サイクルと外来哺乳類の役割、3)国内外来ニホンジカの移入がもたらす人のマダニ刺咬リスク。これらの事例を受けて、人獣共通感染症対策の新たな選択肢として外来種対策を追加する提言を行った。

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