抄録
アクリル繊維の良溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)と貧溶媒である水との混合溶液を用いて,アクリル繊維布を収縮させる方法を提案した.混合溶液中のDMFの体積分率,処理温度,処理時間を変えて収縮性を検討した結果,収縮率はDMFの体積分率の増加に伴い増大し,最大で約55%の収縮率が得られること,収縮は処理時間30分でほぼ飽和に達することがわかった.また,収縮率はアクリル繊維のガラス転移温度以上で急激に増大する.この結果は,収縮がアクリル繊維に対するDMF水溶液の溶媒和・膨潤に基づく分子鎖配列の乱れによることを示している.この収縮加工を応用して,アクリル繊維布に収縮部分と未収縮部分を混在させ,布表面にプリーツ状の凹凸と色調の変化を付与した新しい風合いのテキスタイルを制作した.