本稿の目的は,近年,盛んに使われるようになった「顧客心理型コピー」の伝播力を測定し,その効果を実証的に明らかにすることである.とくに,「顧客心理型コピー」のうち,表現形式上,生の「つぶやき」の体裁を装っている「つぶやき型コピー」と,内言を言語化した「内言型コピー」との伝播力の差異を明らかにしたい.本調査では,文章表現コンクールの作品応募キャンペーンにからめて,過去の顧客心理型のキャッチコピー(文字主体のポスター)を大学構内の掲示板等に貼りめぐらし,学内の教職員・学生がQRコードから投稿できる仕組みを構築した.結果は,「顧客心理型コピー」に触発されて応募された全作品82件のすべてが「内言型コピー」であった.すなわち「つぶやき型コピー」に有意な伝播力は,まったく見出されず,消費者の胸の内を代弁したり,説明したりする,技巧的な「内言型コピー」の伝播力が優っていることが明らかになった.