繊維製品消費科学
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CIELAB色空間から考察した天然染料の色彩的特徴
古濱 裕樹
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2013 年 54 巻 12 号 p. 1075-1082

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抄録

天然染料や天然顔料,合成染料を用いて,日本の染色家や染色業者が染めた多数の布,糸,和紙を分光測色計によって測色した.得られたL*a*b*値(CIELAB)から,天然染料の色彩的特徴を考察した.天然染料では,鮮やかな黄色や赤色が染まり,特にウコン,エンジュ,キハダ,オウレン,タマネギ,ベニバナ,コチニール,ラックの彩度が高かった.一方で,鮮やかな紫色や青緑色,明度の低い鈍い緑色はなかった.群青や緑青などの顔料染色物には天然染料では染まらない色のものがあったが,マイクロスコープによる拡大観察(200倍)によって染料との区別が可能であった.これらの得られた色彩データより,合成染料と天然染料の色彩比較を行い,天然染料で染められる色と合成染料でしか染められない色について明示した.江戸時代以前の伝統色の再現染色布の一部には,天然染料や顔料では染められない色が現れていた

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© 2013 一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
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