日本に近代化をもたらした繊維産業は,若い女性労働者(工女)たちの労働力で成り立っていた.女性労働者たちの労働意識を掻き立てたものは何であったのか.本研究では女性労働者の教養(知識,徳性,意欲など)が大きかったのではないかと考え,労働意識を掻き立てた要因を明らかにすることを目的とした.現存する女性労働者が少ないため,時間と空間を変え,オーラルヒストリー手法を用いて現在のアジア諸国の女性労働者の労働意識を調査した.その結果,次のことを導き出すことができた. 1)明治時代の繊維産業発展時の女性労働者たちの労働意識を支えたものは,自分たちが産業を支え る,家を支える,更には自立の足掛かりとしての希望であった. 2)大正~昭和時代の女性労働者たちの聞き取り調査から就学歴が低い者ほど,将来への希望が高い ことが分かった. 3)現在のアジアの女性労働者たちの労働意識は,就学歴が低い者ほど,将来への夢が具体的で,夢 を実現するために,労働意識が高いことが分かった.