繊維製品消費科学
Online ISSN : 1884-6599
Print ISSN : 0037-2072
ISSN-L : 0037-2072
‘知覚されたファッション・リスク’とその低減戦略に関する研究
神山 進苗村 久恵田中 早苗高木 修
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 31 巻 4 号 p. 190-201

詳細
抄録

人々の主観に基づく危険性の評価のことを, リスク知覚と呼ぶ.本研究は, 特に流行に敏感な商品の購入時に知覚されるリスク (‘知覚されたファッション・リスク’) について, その内容やリスク解消法 (低減法) の内容, さらに両者の関連性や, その関連性に影響する消費者の個人的特性を, 衣服の購入事態を通して検討した.
得られた結果は, 次のごとくであった.
1) ‘知覚されたファッション・リスク’の構造に関して, 「品質・性能懸念」, 「服装規範からの逸脱懸念」, 「着こなし懸念」, 「流行性懸念」, 「自己顕示懸念」と命名した, 5種類の懸念 (因子) が抽出された.
2) リスク低減法の構造に関して, 次のように命名された, 12種類の懸念解消法 (因子) が明らかになった.すなわち, 「友人/モデルによる保証」, 「ブランド/ストアの高イメージによる保証」, 「品質・性能の確認」, 「着用方法の確認」, 「ストア・ロイヤリティ」, 「購入の即断回避」, 「販売店員の助言」, 「家族による保証」, 「経済的犠牲の軽減」, 「着用寿命の確認」, 「試着」, 「自己納得」, である.
3) 5つの‘知覚されたファッション・リスク’のそれぞれを解消させる低減法が, 次のように明らかになった.すなわち, 「品質・性能懸念」を解消させるための「品質・性能の確認」と「着用寿命の確認」, 「服装規範からの逸脱懸念」を解消させるための「経済的犠牲の軽減」と「着用寿命の確認」, 「着こなし・流行性懸念」を解消させるための「友人/モデルによる保証」と「着用方法の確認」, 「流行性懸念」を解消させるための「ブランド/ストアの高イメージによる保証」, 「自己顕示懸念」を解消させるための「着用方法の確認」と「家族による保証」, である.
4) ‘知覚されたファッション・リスク’に対してどのような解消法が利用されているかの観点から, 被調査者の群化が行われ, 4つのクラスターを得た.また各クラスターを, 消費者の個人的特性 (性・年代・社会心理的特性) によって特徴づけることができた.

著者関連情報
© 社団法人 日本繊維製品消費科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top