繊維製品消費科学
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プレス処理による布の厚さと通気性の変化
柳川 良樹脇田 登美司青木 一三
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1998 年 39 巻 4 号 p. 246-253

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抄録

アイロン仕上げやカレンダー加工は, 布を高温で加圧するため, 布表面の形状や光沢だけでなく, 布を構成している繊維及び糸の形態や性能を変化させ, 布の諸性質に影響を与える.本研究ではこのような処理により生じる布の厚さと通気性の変化について調べた.また通気性は布構造の変化を鋭敏に反映する特性値でもあるので, この面よりの布構造の変化についても検討を加えた.
実験試料として綿布と毛織物を用いたが, 両者に特徴的な違いがみられた.比較的厚手の綿布では, 処理温度, 加圧荷重及び時間に対して厚さ, 通気抵抗共に比較的単純な直線的変化を示し, 厚さと通気抵抗の間には強い負の相関関係が認められた.さらに両者の関係を詳しく調べると, 厚さの減少と共に通気抵抗は2次曲線的に増加することが明らかになった.これに対して, 毛織物では処理によって通気抵抗は変化するが, 厚さの変化が少なく, 繊維や糸への拘束が少ない織物ほど, この両者の関係は明確でない.これは羊毛繊維のけん縮が熱や圧力の関係で様々な形態をとり, このため糸の構造や形状, 織物構造の変化も複雑で, 定まった変化傾向を示さないためと考えられる.
一方, カレンダー加工では, 短時間ではあるが非常に高い圧力下での処理であるため, 薄手の綿プロードやナイロンタフタにおいても, 処理温度に比例して通気抵抗値はほぼ直線的な増加傾向を示した.

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© 社団法人 日本繊維製品消費科学会
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