ミシンは布を送り歯と押え金との間に保持し, 送り歯が水平に移動することにより, 縫製布を正確に, 一定長ずつ送り出す.そこで, 送り歯の運動軌跡からミシン1回転当りの布の送り長を基準長とし, 諸因子が布の送り量におよぼす影響を実験的に検討した.その結果, 押え金の圧力が約2500g/cm2のときには, 他の因子は送り量に影響しない.圧力がそれ以下の場合には, 回転数が小さく, 押え金裏面が粗に, 試料の重ね枚数が多く, 糸張力が大きいほど, 送り量は少なくなる.布の一端にばね秤りを置いて送り力Fを測定し, 押え金および送り歯と試料との摩擦係数をμ, 糸の張力による阻止力をTとすれば, F=μP-Tなる関係があり, 実験上μは0.23, Tはほぼ下糸の静止張力に等しかった.