雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
放射冷却による製氷過程の観察
上村 靖司星野 真吾
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キーワード: 放射冷却, 製氷, 単結晶
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 70 巻 5 号 p. 477-485

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抄録

一般に氷を製造する場合の熱移動は,熱伝導または対流熱伝達が支配的であり,放射を工業上利用した製氷技術は見当たらず,その得失は未知である.本研究は,放射冷却による製氷(放射製氷) の技術開発を目的とし,実証実験装置を試作しその製氷過程の観察を行った.実験装置は低温熱源と断熱水槽で構成され,両者の間の熱伝導と対流熱伝達を排除し,かつ霜の成長を抑制するための真空層を挿入した. 実験は雰囲気温度約2℃に保持された低温室内で行い,水槽側面の静止画像撮影と水温測定を行った.初晶は冷却開始から数時間後に水槽上面で自然発生し,その後鉛直下向きにほぼ一定速度で成長し,40時間で約20mm の厚さとなった.その間の成長速度は0.6mmh-1であった. 生成された氷は目視では完全に透明で気泡も見られなかった.そして結晶は全体が鉛直方向をc軸とする単結晶であった.熱伝導による製氷(伝導製氷)と比較を行った結果, 伝導製氷は氷が厚くなると成長速度が低下するのに対し,放射製氷では速度低下が見られず,また取り込まれる気泡のサイズが小さいという違いが見られた.

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© 2008 公益社団法人 日本雪氷学会
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