雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
ウィンドエロージョン研究の変遷と現状
三上 正男
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2009 年 71 巻 2 号 p. 91-103

詳細
抄録
ウィンドエロージョン(wind erosion; 風成浸食,風食)とは,強風により地表面から土壌粒子が舞い上がる現象を表す.風の応力により土壌粒子が舞い上がるという物理過程は,地吹雪との共通点があるが, 飛散する土壌粒子は直径100μm 前後が多く,また土壌粒子の地面への衝突によりより小さな直径数μm の黄砂粒子(ダスト)を大気中に舞い上げる点で両者は大きく異なっている. ウィンドエロージョンの研究は1940年代より表土流出あるいは地形学として行われてきたが,1990年代の後半より気候システムに係わる過程が注目されるに及び,大気科学の研究対象としても研究されるようになった.近年は,飛砂飛散過程を粒径別に直接測定する測器の開発や,地上ベースのライダーネットワークの整備,CALIPSO等地球観測衛星技術の進歩などを背景として,現象の理解は深まり,さらにダストの発生・輸送・沈着を陽に組み込んだダストモデルも実用化され,黄砂予測などにも利用されている.しかし,飛砂の飛散とそれによるダストの舞いあがりの素過程に関しては, 依然不明な点は多く,観測・実験による現象の理解と理論の高度化,及びそれに基づくモデルの高精度化が望まれる.
著者関連情報
© 2009 公益社団法人 日本雪氷学会
前の記事 次の記事
feedback
Top