抄録
南極氷床上では強い力タバ風が年間を通して吹送することから,多量の積雪が連続的に再配分される.この輸送量は南極氷床の質量およびエネルギー収支の議論で不可欠な要素となるほか,グローバルな気候変動の影響を予測するうえでも重要な鍵とされている. 一方,広大な平原とそこを吹きわたる力タバ風は,時間的にも空間的にも変動の小さい定常な吹雪を発生させるため,南極は吹雪に関する理論やモデルの検証と評価が可能な理想的実験フィールドと言っても過言でない.本解説では,比較的新しい南極での吹雪観測結果のほか,積雪の再配分と吹雪からの昇華蒸発がもたらす表面質量収支への寄与,さらには海塩エアロゾルの供給源としての海水上の吹雪に関する議論などについて,それぞれの概要を紹介する.