雪氷
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年輪解析による少積雪寒冷地域におけるカラマツの成長に及ぼす土壌凍結の影響評価
今村 百太武田 一夫火ノ川 祐貴野堀 嘉裕木村 賢人瀧 誠志郎
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2016 年 78 巻 5 号 p. 269-279

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抄録
少積雪寒冷地域で土壌凍結が樹木の成長に及ぼす影響を明らかにするため,北海道東部の十勝地域に生育するカラマツ(Larix Kaempferi)を対象に,年輪幅と気象に関わるいくつかの要素との相関分析を行った.はじめに,20個体・40試料を解析して得た各年輪曲線を集約して,採取地を代表する1本の標準年輪曲線(個体間の相関係数0.646)にまとめた.この曲線を構成する年輪幅は,1981年11月〜2013年4月の32年冬期分の最大凍結深と負の相関があった.相関係数は,r=−0.451(p<0.01)となり,解析した要素の中で最も大きくなった.また,年輪幅は寒さの度合いを示す凍結指数とは相関が認められず,最大積雪深と正の相関(r=0.312,p=0.08)があった.32年分の最大凍結深の平均値は0.25mであり,カラマツ根系の細根分布の深さと一致した.カラマツ生育地の表土が凍上性であることを考慮すると,最大凍結深が大きいと,凍上による細根の切断リスクは高まることが予想される.このため,カラマツの肥大成長が抑制されて,年輪幅は小さくなると考えられる.
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© 2016 公益社団法人 日本雪氷学会
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