2009年から2014年の4月の立山・室堂平における積雪層中のナトリウムイオン(Na
+)と塩化物イオン(Cl
−)の濃度を比較した結果,2011年までは両者の比がほぼ海水比に等しかったのに対し,2012年以降では過剰のCl
−がみられ,立山・弥陀ヶ原(地獄谷)の噴気活動の活発化によるものと考えられる.2009年と2014年の積雪層を比較した結果,2014年では,Na
+濃度のピークを伴わない高濃度Cl
−層がいくつもみられたが,いずれの層においても非海塩起源硫酸イオン(nssSO
42−)濃度は高くなく,火山ガスによるnssSO
42−への影響はほとんどないと考えられる.地獄谷の噴気活動の活発・拡大化は,2012年以降の室堂平での積雪中のCl
−濃度に影響を及ぼしているものの,nssSO
42−などの人為汚染物質の輸送・沈着を考察する上で影響はほとんどないと考えられる.
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