抄録
秋田雪の会では鳥海山の北東斜面に位置する吹きだまり型多年性雪渓の一つ,七ツ釜南東部雪渓を1980年から定期的に調査してきた.本研究ではこの35年間の観測結果に基づき,雪渓規模の長期変動の特徴と涵養・消耗を制御する要因に関する解析を行った.得られた結果は次のように要約される.(1)雪渓規模(8月の体積)の変動を35年間通してみると,統計的に有意な縮小又は増大の長期トレンドは見られない.(2)8月の雪渓規模に影響を与える気候要素として,北東山麓に位置する矢島の冬期降水量,冬期平均気温,冬期降水量の前年差,秋田の冬期850 hPa等圧面平均風速,寒気の吹き出しに関与する冬期850 hPa等圧面平均高度および輪島との高度差が統計的に有意である.(3)8月から10月までの雪渓の消耗に関わる気候要素として,矢島の積算日照時間と積算気温が統計的に有意である.