抄録
上暖下冷の空気層内で光が屈折して起こる上位蜃気楼は近年日本各地で発生が確認されているが,発生メカニズムについては研究の途上である.本研究では北海道東部のオホーツク海に面した斜里町において,冬季に発生する「冬の上位蜃気楼」に注目し,放射冷却によって陸地で形成された冷気が海上に流れ込むことでこの蜃気楼が発生するという想定を検証する.そのために,観測機器を地上に設置して,その発生時にどのような温度構造となるのかを探る観測手法の確立を目指した.高さの異なる同地点に気象計を設置して得られる温度差の把握や,低温下及び夜間での運用を初めて行った定点カメラによる撮影,ドローンを用いた低温下での鉛直気温分布の計測を実施した.その結果,斜里町の蜃気楼発生時には放射冷却による冷気が高さ60mから100m以上の接地逆転層を形成することや,時間帯にかかわらず1日中発生しているという新たな知見が得られた.これらの観測手法は今後の発生メカニズム研究に有力な方法と考える.