抄録
北極域で現在急激に進行している温暖化は,海面上昇や大気の遠隔影響を通じて地球規模の環境変動をもたらすと考えられる.グリーンランド氷床の表面融解は様々な不確定性を含み,正確な将来予測を行う上で解明すべき課題となっている.地球温暖化のもとでグリーンランド氷床の大気,雪氷,雪氷微生物がどのように氷床変動に影響するかを明らかにするため,2011 年度から2019 年度にかけてSIGMA 及びSIGMA-II プロジェクトが実施された.また,平行してGRENE,ArCS といった大型の北極研究プロジェクトも実施され,日本のグリーンランド研究が一気に加速される状況になった.本稿ではSIGMA・SIGMA-II プロジェクト及び関連研究課題の成果について(1)大気・雪氷・雪氷微生物の現地観測,(2)アイスコア掘削,(3)衛星観測,(4)数値モデリングのカテゴリーに分けて解説する.さらに,これらの分野における現状の課題,最近開始されたArCS II雪氷課題へのつながり及び人材育成の重要性について述べる.