雪氷
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オオシラビソ林の林冠内における冠雪の落下と 気象条件との関係
桶谷 洸太松元 高峰 河島 克久
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2021 年 83 巻 5 号 p. 523-532

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抄録

森林における冠雪の落下と気象条件との関係を明らかにするために,福島県の山地にあるオオシラビソ林において,タイムラプスカメラを用いた1 時間ごとの連続撮影により,林冠下部の枝葉からの冠雪の落下現象の観測を行った.1 時間に確認される落雪の発生数をもとにして,冠雪の落下現象を,一部の枝から局所的に落雪する「タイプⅠ」と,多くの枝から同時多発的に落雪する「タイプⅡ」の2 つに分類した.タイプⅡはさらに,見かけの時間あたりの落雪量が多い「タイプⅡ-A」と,少ない「タイプⅡ-B」の2 つに区分した.調査地近傍のアメダスの気象観測データを用いて,タイプごとに落雪時の気象条件を分析した結果,タイプⅠは,およそ気温0℃以下で発生しており,タイプⅡは,その多くが気温0℃以上で発生していた.そして,気温が2℃前後までの場合にはタイプⅡ-B が,それよりも高くなった場合にはタイプⅡ-A が主として発生していることが分かった.その一方で,風速や日射量には落雪のタイプによる大きな違いが見られなかった.以上より,森林内における冠雪の落下とその形態に影響を及ぼす気象要素は,主に気温であるということが明らかとなった.

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© 2021 公益社団法人 日本雪氷学会
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