富士山において雪崩の空振観測を試みた.2018-2020年のふた冬,空振計を温度プローブ積雪計および地震計と共に設置し,データの統合解析を行った.期間中に大きな雪崩は発生しなかったが,報告されている雪崩空振に類似した波形が,多数捉えられた.それらの空振イベントは雪崩とは特定できないが,顕著な地震波を伴わないことから表層現象によるものと判断された.また,降雪中や直後,融雪期に集中して発生していることも分かった.2019-2020年の空振アレイを用いた方向推定では,イベントのほとんどは観測点下方の富士山北側山麓方向から来ていること,山頂方向からは連続的な空振ノイズが頻繁に捉えられていることが分かった.このノイズのために,山頂方向からの空振イベントの検知が妨げられている可能性がある.本研究により,冬季の富士山という厳しい環境の中での多項目観測の実装可能性とその有効性が確認された.また,巨大な山体を持つ富士山特有の空振観測の困難さも明らかになった.本研究の結果が今後の観測デザインに役立つことを期待する.