雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
84 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • 池田 航, 市原 美恵, 本多 亮, 青山 裕, 高橋 英俊, 吉本 充, 酒井 慎一
    2022 年 84 巻 5 号 p. 421-432
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    富士山において雪崩の空振観測を試みた.2018-2020年のふた冬,空振計を温度プローブ積雪計および地震計と共に設置し,データの統合解析を行った.期間中に大きな雪崩は発生しなかったが,報告されている雪崩空振に類似した波形が,多数捉えられた.それらの空振イベントは雪崩とは特定できないが,顕著な地震波を伴わないことから表層現象によるものと判断された.また,降雪中や直後,融雪期に集中して発生していることも分かった.2019-2020年の空振アレイを用いた方向推定では,イベントのほとんどは観測点下方の富士山北側山麓方向から来ていること,山頂方向からは連続的な空振ノイズが頻繁に捉えられていることが分かった.このノイズのために,山頂方向からの空振イベントの検知が妨げられている可能性がある.本研究により,冬季の富士山という厳しい環境の中での多項目観測の実装可能性とその有効性が確認された.また,巨大な山体を持つ富士山特有の空振観測の困難さも明らかになった.本研究の結果が今後の観測デザインに役立つことを期待する.

最近の研究から
研究ノート
  • 安達 聖, 勝島 隆史, 荒川 逸人
    2022 年 84 巻 5 号 p. 439-452
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    山岳域での小型回転翼UAV(Unmanned Aerial Vehicle)の積雪深分布調査や雪崩調査への適用を前提とし,雪崩区の積雪深分布および雪崩堆積深の分布を計測する手法を検討した.UAVによる積雪深分布の計測手法では,雪崩区に成育する植生の影響とGNSS(Global Navigation Satellite System)の測位精度の影響により,雪崩区の斜面中の積雪深分布を正確に計測できないという課題がある.本稿では,LiDAR(Light Detection And Ranging)を用いた航空レーザー測量により得られた5 mメッシュのDEM(Digital Elevation Model)と,後処理キネマティック測位により求めた座標位置を用いたUAV 空撮測量から作成した積雪表面のDSM(Digital Surface Model)を用いることで,雪崩区の侵食および植生の影響を排除した積雪深分布図を得られることを示した.その結果,積雪深分布図から雪崩区の堆積深を計測することができるだけでなく,隔時計測により,クラックの発生と拡大の様子,雪庇が発達しグライドにより雪庇全体が移動する様子を捉えられることを示した.

解説
  • 伊藤 陽一
    2022 年 84 巻 5 号 p. 453-457
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    雪崩の堆積物が開けた斜面でも面的に広がらず細長い筋状になる「フィンガー状堆積」について解説した.雪崩と類似した現象である土石流では,流動時のセグリゲーションがフィンガー状堆積の要因と考えられているが,雪崩堆積物の調査結果からは否定的な結論が得られている.そこで,流れの速度やrandom kinetic energyの大小によって流れが流動し続けるか停止・堆積するモデルを構築することによって定性的にフィンガー状堆積の過程を説明できる仮説を紹介した.

feedback
Top