2022 年 84 巻 6 号 p. 489-501
本研究は山形県での先行研究をもとに富山県での屋根雪関連事故と気象要因との関係を明らかにすることを目的とする.まず,富山県全体について日最高気温と7日間降雪量を用いて,これらと事故件数との関係を解析した.事故件数と日最高気温の関係では先行研究の山形県と同様に,事故件数が多いのは,日最高気温が数 ℃の場合となった.また,事故件数と7日間降雪量では,事故件数が多いのは7日間降雪量が多い場合であった.富山県は事故の大半が転落事故であったことから雪下ろしの必要性が高まったことによる人為的要素の強い事故が多かったものと推察された.続いて,ある気象条件のときにどのくらい事故が発生しているかという発生危険度を求め,日最高気温と7日間降雪量を用いた注意基準を作成した.そして検証指数を用いて注意基準を検証した.全体を通じて,先行研究に比べて事故件数が少ないながらも,屋根雪関連事故が発生している.事故の要因が気温や降雪といった気象要因よりも,雪下ろしの必要性といった人為的要因が強いという特徴は人の意識によって事故が防げる可能性を示唆しており,注意喚起が重要であると考えられる.