2022 年 84 巻 6 号 p. 503-514
海氷内で析出する炭酸カルシウム6水和物イカアイト(CaCO3・6H2O)結晶の析出条件を明らかにすることを目的として,様々な条件において室内実験を実施した.天然海水を-25 ℃で凍結後,1,7,21日間静置した.その後,+4 ℃で海氷を融解し,イカアイト結晶の個数およびサイズを計測した.その結果,1日間静置した場合,イカアイト結晶が見られなかった.しかし,7および21日間静置した場合,海水1リットル当たりそれぞれ565および4,998個存在した.つまり,時間の経過とともにイカアイト結晶の個数は増加した.また,結晶のサイズ分布は,静置時間の違いによって変化した.さらに,海水の炭酸系環境がイカアイト結晶の析出に与える影響を評価するための実験では,NaOH量の増加(pHの増加)とともにイカアイト結晶の個数は増加した.これは,NaOHの添加によって海水のpHが増加し,イカアイト結晶が析出しやすい条件になったためと考えられる.