2024 年 86 巻 3 号 p. 167-182
「日本氣象資料」(中央氣象臺・海洋氣象臺編,1939)は全国の古文書から降雨や降雪などに関する記述データを収集・整理している.「日本の雪害史」(角屋・新宮,1981)は東北,信越,北陸地方を対象に雪害記録をまとめている.この2つの資料から7世紀~19世紀末までの約1300年にわたる大雪,寡雪,不時降雪(季節外れの雪),異雪(赤雪),初雪の記述データを整理した.その結果,以下のことが分かった.(1)大雪は国や地域によって記録密度の濃淡はあるものの,ほとんどの国や地域で記録されている.(2)寡雪が記録された国や地域は大雪よりも少なく,山陰から中部内陸,関東,北陸,東北が中心である.(3)17世紀~19世紀末まで,地域によっては大雪と寡雪が交互に頻繁に出現している.(4)不時降雪は全国的に記録され,特に越後や京都に多い.(5)異雪が記録された地域は北陸と東北にほぼ限られる.また,記述データに関する既存研究例を紹介し,雪の記述データの利用可能性について言及した.特に,最近の気候変動下における大雪や少雪年の出現が将来どのように変化していくかを考える上で,1600年~1890年頃までの大雪と寡雪の出現記録は重要な資料になると考える.