1994 年 56 巻 3 号 p. 243-249
降雪レーダー観測を新庄盆地においておこなった.3.2cmの在来型レーダーを使用した.この研究は降雪の地形的な相違,特に風上側の丘陵地帯を越えて盆地に進入する降雪雲についておこなった一連の観測研究の1986年の解析結果である.
冬期季節風下で,極気団からの吹き出しがあるとき,日本海に面した庄内平野では降雪雲は一般に東に向かって移動する.その後出羽丘陵(山頂で海抜600から800m)を越えるか最上川峡谷を通過して新庄盆地に至る.
解析結果は,1)レーダービーム高度における雪雲のレーダー反射強度を積算した降水の水平分布が丘陵上に降る降雪と峡谷上に降る降雪に何等意味ある差異を示さなかった事である.この観測事実は降雪エコーが高度の高い丘陵より高度の低い峡谷を通り易いという傾向が無い事を示しているだろう.2)また,降雪が風下側の丘陵東麓に集中するときは,上層に逆転層が存在し,重力波による強い下降流に支配されている場合であり,他方降雪が盆地の奥深くまで活発なときは,気層が不安定で積雲活動が盆地上空まで維持される場合であると考えられる.
これらの知見は一つのそして重要な観測事実であろう.