十日町における降水中の海塩起源物質濃度と気象条件との関連,および山地を含む地域における,新雪中の海塩起源物質濃度の空間分布について検討を行った.
冬季降水および新雪中のNa
+濃度とMg
2+, Cl
-濃度それぞれの比は,海水中の濃度比と良く一致し,Na
+, Mg
2+, Cl
-のほとんどが海塩を起源とするものである.十日町における冬季降水中に含まれる化学物質の約7割が海塩を起源とするものである.冬型の気圧配置時の大陸からの寒気の吹き出しによる降水では,輪島での対流混合層が高く,十日町における降水中のNa
+濃度も高くなる.十日町における降水中のNa
+濃度と,輪島での対流混合層の高さについての回帰式は,札幌における場合よりも,対流混合層の高さに対するNa
+濃度が高くなる.これは,降雪雲の日本海上での吹走距離の差異に起因すると考えられる.
新雪中の海塩起源物質濃度と海岸からの距離との間には,全体としての明瞭な関係は認められないが,測線ごとには,海岸から離れるに従い新雪中の海塩起源物質濃度が減少する.また,谷の勾配が急で,降雪雲に対する地形効果が大きいと考えられる測線では,他の測線に比べて新雪中の海塩起源物質濃度が高くなる.
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